こんにちは、不動産鑑定事業部の鑑定士 伊奈です。
不動産コラム第2回目は、
アパート・マンションを所有されている
オーナー様は少なからず関心をお持ちである、
〝日本の将来人口の変動が賃貸経営に与える影響〟
について取り上げてみたいと思います。
首都圏への人口集中が言われるようになってずいぶん経ちます。
その実態はどのようになっており、
アパート・マンション経営に将来どのような影響を及ぼし、
また及ぼしつつあるのか具体的な数字を挙げて考えてみましょう。
下のグラフをご覧ください。
国立社会保障・人口問題研究所が発表した
日本の将来推計人口(平成24年1月推計)に基づいて、
分かりやすくするため独自に地域別の人口増減率を求めてグラフ化したものです。
まず、2005年から2035年にかけて日本全体の人口は
1億2,543万人から1億10,679万人へ
今から約13.3%減少することが予想されています。
しかし減少の一途をたどるとはいえその減少の仕方は一律ではなく、
地域によってかなりのばらつきがあります。
最も減少速度が緩やかなのは南関東、
これは東京を含む一都三県すなわち首都圏で、
2035年時点では5年前と比較した
全国の平均減少率△4.9%に対し△2.7%となっています。
また、5年前より人口が減少する減少県の数は2015年時点で42県にのぼり、
2030年になると全国の47都道府県の全てで減少に転じます。
このように人口減少がすでに明らかである現状で、アパートやマンションといった
賃貸住宅の空室率はどのようになっているのでしょうか?
HOME'S不動産投資のHPに、以下のようなデータが示されています。
平成25年1月27日時点で、全国の賃貸用住宅の空室率は18.9%ですが、
内訳では47の都道府県のうち実に26県が空室率20%を超えています。
では、上記首都圏ではどうかといいますと、
千葉県こそ20.5%と少々20%を上回りますが、埼玉県で18.4%、神奈川県16.1%、
東京都に至っては物件総数が圧倒的に多いのにもかかわらず
13.8%という低い水準でした。
アパート・マンション経営の要、空室率すなわち入居率を左右するのは
ターゲットとする入居者の種類(学生、シングル、ディンクス、ファミリー)や
それに見合った立地、交通・生活利便性、構造設備、築年数、周辺環境等
様々な要因が考えられます。
そういった中で多くの企業や大学等が集中している首都圏は
賃借人となりうる分母も多く、現在そして将来的にもそれだけ
空室リスクを低く抑えることが可能であるといえるでしょう。
最後に余談となりますが、
2013年1月14日発行の全国賃貸住宅新聞に次のような記事が掲載されました。
〝生命保険大手が今後一定枠を設け、
賃貸マンションへの継続的な投資を行う〟
という内容です。
狙いは安定した賃料収入による運用益の獲得にあり、投資枠自体は拡大せず、
地方オフィスビルの売却益で都心のマンションに再投資するため
所有不動産の組換えを行ったということです。
〝賃貸住宅への投資は中・長期的に安定した賃料収入を得られることが
大きなメリットであり、安定した投資先としての
賃貸住宅の存在感が生命保険業界でも増している。〟
と締めくくられています。
このように特に安定性が認められているアパート・マンション経営ではありますが、
将来の日本の人口減少とその状況を視野に入れますと、
30年先も一定の需要が確保できる首都圏の物件に投資することが、
より賢明な選択といえるのではないでしょうか。