2014年7月11日金曜日

不動産鑑定事業部コラム 第⑨回                     2014年不動産市況と割安物件について


こんにちは、不動産鑑定事業部 鑑定士 伊奈です。



不動産取引が活発になったという話があちらこちらで聞かれるようになり、
景気が上向いてきている日本経済の状況を実感します。


ソニーが不動産事業を開始するというニュースも飛び込んできました。
 
不動産に関する、売買仲介、賃貸管理、
プロパティマネジメント、コンサルティングなどを
顧客視点に立った新しい不動産総合サービススキームで行う、ということです。
 
大手電機メーカーがこれまで培ってきたエレクトロニクス、金融
エンターテイメント等の多様な事業技術、
ネットワークを駆使して不動産業界でどのような新スキームを構築し、
独自性を打ち出していくのか興味深いものではあります。


さて、現在の不動産市況をざっとまとめてみましょう。
 
まず、2014年地価公示では、全国的に地価が上昇した地点が大幅に増え、
三大都市圏では住宅地、商業地共に上昇に転じました。
 
特に東京圏では、約4分の3の地点で上昇となっています。
 
また、企業業績の回復を反映し、長い間下落を続けていた
オフィスビルの賃料が上昇に転じ、空室率は低下傾向にあります。

さらに低金利の持続、円安、投資物件の値頃感や五輪効果への
期待等多くの要因を背景に、海外の投資マネーが日本に回帰し始めています。

このような日本経済の明るい見通しへの期待感は、身近な所でも感じられます。


例えば、弊社の賃貸管理部門では日々多くの賃貸仲介会社に対応しますが、
中国をはじめ外国籍の方を顧客とする会社からの問合せが
急に増えてきたようです。

また私自身も最近知り合いから、
「中国人教師がマンションを買うための査定をしてほしい」
という依頼を受けました。

日本に家族で暮らしているという話でしたので、
賃貸からの単純な買い替えかと思われましたが、
地域条件や個別条件を分析して妥当と思われる価額を回答し、
万一投資目的ならばお薦めできない旨を付け足したところ、
実際は投資目的であったため購入を見合わせたということでした。

この時改めて気づかされたことは、日常的に不動産に携わらない方々は、
価格が文字通り「安い」ということにのみ目が行きがちということです。

不動産業界で仕事に従事する人間は、
暗黙の裡に「安い」≠「割安」という認識をもっています。

安い物件には安いなりの理由があり、
それを考慮してなおメリットを享受できる者が購入します。

売り出している価格が実際の資産価値と均衡しているかを検討するため、
簡易な査定で必ず求めるのが賃料を利回りで割り戻して求める収益価格です。

売買事例同士の比較だけでなく、
収益性を考慮することにより、投資的な視点から
売り出し価格が妥当な水準にあるかを総合的に判断することができます。

投資目的でない場合特にファミリータイプでは、
周辺環境や地縁などに購入者自身が魅力を感じていれば、
収益価格を超える価格で購入しても満足が得られるでしょう。

購入目的によって、割安感の判断は変わり得ますが、
投資的観点からみて割安な物件はそう簡単には見つかりません。


東京カンテイが201311月に
「首都圏の新築マンション、収益力の高いエリア」
として、上位20位のランキングを発表しました。

この時割安感の目安とされたのが、マンション価格が
月額賃料の何か月分に相当するかを算出したPERという指標です。

PERの低い(収益性の高い)エリアの特徴は、

「価格のわりに利便性が高いエリア」
と、
「街づくりがしっかり行われ、生活利便性が良好な郊外エリア」
に大きく分けられるようです。
 
投資向きでない物件は、
実際とれる賃料が売り出し価格に見合っていないものなので、
逆に、売り出し価格と比較して
高い賃料が取れているということは、まさに割安といえます。

特に前者のエリアとして挙げられている「川崎」「北千住」「西日暮里」は、
将来性があり投資観点からみてもお勧めといえるのではないでしょうか。

旧来は工場街だったり、お寺(墓地)が多かったり、
治安の面でもどちらかと言えばイメージの良くなかった地域が
再開発によってイメージを一新し、
他の地区から人口が流入してくる構造となっているようです。

但し、「新築」で「ファミリータイプ」の物件のため、
募集と成約のどちらの賃料ベースで査定されているのか、
広いファミリータイプは
シングル・ディンクスに比べ流動性が劣ることに注意が必要です。